「昨日まで、何も変なことなんか起きなくて、楽しかったんだ。
穏やかで楽しくて。毎日が賑やかで。……そんな毎日が繰り返されることに、何の不安もなかった」
「……うん。そうだね。毎日楽しいよ。きっと今日も楽しくなる」
「……絶対にそうなるって、自信が持てるか?」
「え、っと……」
「思えばここ最近、不安だったんだ。
……毎日が楽しいからこそ、ある日ふっと、……電球が切れるみたいに、突然。……真っ暗になってしまうんじゃないか、って」
「……うん。その気持ち、ちょっぴりレナもわかるよ。
……私たちはいい事ばかりは続かないって、……ずーっと教えられてきたから。
……楽しいことの裏側を時々恐れるよね。それってちょっぴり悲しいことだけど……。
でも、そのお陰で、私たちは楽しい毎日がずーっと続くように、努力することを覚えたんだよ」
「……そうだな」
「だから、圭一くんが楽しい日々がいつまでも続かないかもしれないって思うのは、決して悪いことじゃないと思うよ。
……例えば、うん。明日突然、火山が大爆発して、私たちが全員死んじゃうとする」
「おいおい……、物騒な話だな……」
「例えば、その大災害を圭一くんだけが生き残ったとしたら、……どう感じる?」
「……どうって、ん……。
……胸が張り裂けるだろうな。……まず、……泣くと思う」
「そしてこう思うんじゃないかな?
こうなることが運命だったなら、昨日までの日を、もっともっと楽しく、悔いなく過ごせばよかった、って」
「……思うだろうな」
「楽しい毎日がいつか終わるものなら、それがいつかなんて誰にもわからない。
だったら、たとえ明日そうなっても悔いがないように、精一杯楽しく生きるのが正解じゃないのかな」
「……そう、だな」
「それに気づくのはとても難しいこと。……多くの人たちは、日々の幸せに飽食してるよ。
今日と同じ明日が訪れると信じきってるから、今日出来ることを明日に送る。今日してやれるやさしさを、明日に送ってしまう。
でも圭一くんはそれに気づけた。……それはとても素敵なことだと思う。
だから、その不安な気持ち、……大切にしてもいいと思うの」
「この不安を、大切に……?」
「そう。明日には大災害でみんな死んじゃうかもしれない。……だから今日、みんなにいっぱいやさしくしよう。
本当に終末が訪れた時、後悔しないために」
「……レナは実践してるのか?明日、みんなが死んじゃっても後悔しないようにさ」
「……うん」
「レナは、……楽しい毎日がたった一日を境に終わってしまうことを知ってるから。
今日が楽しくても、明日も楽しい保証なんかないって知ってるから。……生きてるよ。精一杯」
ひぐらしのなく頃にをプレイした(アニメなどで見た)方はわかるかも知れませんが、祟殺し編のレナと圭一の会話の一部です。
今回の地震の被災者もそうでない人も、生きている人はよく心に刻んでおいた方がいいかも。