「例えばだな、些細なことからへそを曲げた奴がいたとしようか。
それで、そいつは自分の部屋に閉じこもってしまった。
友達が説得に行くんだが、うまく説得できずにさらにケンカしてしまった。
ケンカといっても、話に行った方はそれなりに心配はしていた。ただ相手が頑なすぎてつい怒ってしまったという感じだな。
でだな。
お前なら、どうする?」
「うーん、そうね。
どっちも悪い、かな」
「まあ・・・それは」
「けど、大切なのはどっちがより悪いかなんてことじゃないの。
どっちが折れるかってことなの」
「折れる?」
「つまり、沢村くんはその人が大切なわけでしょう?」
「俺じゃない」
「このままでいてはいけない。それはわかる。
けど、相手は自暴自棄になってて、そんなわかりきったことも見えなくなってるんじゃない?
そういうときは、冷静なほうが、折れるの。たとえ自分が悪くなくてもね。
それで、たいていはうまくいくから」
「なるほど」
「とにかく、謝る。謝って、仲直りしたいことを告げる。まずはこれからよ」